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ワイン好きが避けるヤマソーヴィニョン

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日本古来のDNAを持つワイン用ぶどう品種

ヤマソーヴィニョンとは、山梨大学で開発された品種で、山梨県笛吹市の御坂峠に自生していた山葡萄とフランスのカベルネ・ソーヴィニョンを交配した品種です。

日本の湿度の高い気候にも強く、栽培しやすい赤ワイン用ぶどう品種です。

山葡萄由来の爽やかな酸味と、カベルネ・ソーヴィニヨン由来の穏やかなタンニンやコクのある味わいが特徴です。

ところが、ワイン愛好家の中では、山葡萄独特の風味が雑味に感じられる、とされて敬遠する愛好家がいるのも事実です。山葡萄系ワイン愛好家の中では根強く支持されますが、母数としては多くはなく、国外のアロマティックなワインとは全く異なるものだという評価の方が強いと思われます。

しかし、日本でカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど国際品種を栽培するにも、病気になりやすいという問題があります。また高温多湿な日本の気候で栽培すると、なかなか糖度が上がらない(アルコール度数12%のワインを作るためには23〜24度の糖度が必要です)、そして糖度が上がり切る前にワインの味を決める上で大事な酸が落ちてしまう、という問題もあります。

実際に日本で売られているヤマ・ソーヴィニョンのワインの中には、酸度が強いものが多いようで、「これが山葡萄系のワインの味わいだ」とする風潮があるようです。

山葡萄の風味とカベルネ・ソービニヨンの果実味

私は、全く違う視点を持っています。

これはワイン発酵後のぶどうかすをプレスした時の色です。国際品種にはない、日本独特の色合いと、赤シソに若干近い独特の風味があります。糖度があるジュースではその魅力を十分に堪能できるのですが、ワイン発酵では糖分がアルコールになるので、ワインになる頃には糖分はほとんど残らない状態になります。

例えば、シャインマスカットを食べる時には、糖度と一緒に独特の風味がとても美味しいのですが、これをワインにすると糖度がなくなったときには、あれほど美味しいと思っていた風味もなくなり、「薄っぺらい」ワインになります。山葡萄も糖度があるうちはまだ酸度が落ち着いて感じられたのに、糖度がなくなると「酸っぱい」ワインになったり、「青臭さ」という雑味が感じられるワインになったりします。

山葡萄は十分に熟するのに時間がかかり、10月に収穫する地方が多いため、完熟に至っていないものを収穫すると起こります。

酸味と青臭さが抜ける時期

またもう一つの親である、カベルネ・ソーヴィニョンも同じく晩生の品種であり、完熟前に収穫すると「ピーマン臭」がするとされており、糖度や酸度だけでなくその青臭さが抜けて微細なアロマが立ち込めるのを確認してから収穫時期を決めます。この収穫時期を決めるための微細なアロマは本当に微細なので、感じられない人が多いのも事実です。

山葡萄もカベルネ・ソーヴィニョンも、種類は違えどどちらも青臭さやタンニンが強い品種です。おそらく、両者の血を引いているためにヤマ・ソーヴィニョンは収穫時期を誤ると、酸度が高く雑味のあるワインになりやすいのだと思われます。うまく栽培すると、カベルネ・ソーヴィニヨンに近い、ベリーやカシスのような風味(年によって違いますが)が表に出てくるようになります。そして醸造をすると、カベルネ・ソービニヨンとも違う山葡萄独特の日本的な風味も出てきて思わず「うっとり」としてしまいます。

収穫のベストタイミングを見誤ると実の酸度が落ちてしまうのでは?という声もありそうですが、もともと酸度が強い為、栽培の仕方によりますが、糖度が24度、酸度も程よい時期を生み出すことは可能だと考えています。

ワイン作りの手引き書やマニュアルに沿っているだけではできないことですが、これこそ小さなワイナリーだからこそ目指すことができる味わいだと思います。おそらく、栽培の考え方としては、フランスではなく、あまり知られていない癖の強い土着品種がたくさんあるイタリアで修行した人にしか作れないのかも、と思います。

日本ならではの高貴な味わいを生み出すために、行うべき栽培上の工夫はいくつもあります。2029年に初リリースできるよう、栽培方法に磨きをかけ、日本独特の味わいを持つワインを実現していきたいと考えています。

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